ちなみに広場について書いてます。

広場について綴るブログです。

考え忘れてたことの話

引っ越しの荷物を片付けていて、壁に本棚をばんばんばんばんと打ち付けて、
段ボールをがつがつ開けて、
とりあえずばっさばっさと放りこんで、ああ、荷物が片づいた、
とほっとしてた時、足下にあったのは、片付けきれない日々の細々。


パソコン、運転免許の住所書き換えのために取った住民票の写し、
引っ越したあとにしなきゃならないtodoリスト、生協の連絡先を書き取ったコピー用紙、
時計を取り付けるために買ってきたビスの残り、近所の子の赤い水性ペン、
そのふた、トランプの箱。おおなんと日々の小さく細かいことよ。


壁の本棚に一番最初に作らなくちゃいけないスペースは、
こうした日々の細々を放り込んでおける場所。考え忘れてた。
さっきしまった文房具のもろもろを一段下に下げて、
こうした現在進行形すぎて片づかないものたちを放り込むスペースを一段分作る。

これでリビング(兼ダイニングね)にものが散らからずに済む。


引っ越しの片付けに飽きて、裏の丘を散策しにいくことにする。
息子のベビーカー(最近息子はベビカ、って呼ぶ)に
残り物のフランスパンと底の方に少しだけ残ったワインの瓶と、
急いで握ったゆかりとわかめのおにぎり5つを詰めたお弁当と、お水を持って出かける。


5月の緑がまぶしい。坂の途中ですでにワインを飲み干す。旨い。
坂を登り切って見つけたベンチでお昼にする。快晴。
わかめのおにぎりが美味しい。
デザート替わりにジャムを持ってきたのでフランスパンにつけて分け合う。
丘の上から眺めると見慣れた日本の家並み。ふむ。


もしフランス人が、モンマルトルの丘の上からパリを眺めたら、
たとえ産まれたときからパリに住み続けてる生粋のフランス人でも
見飽きたりしないのかしら、とごちる。
やっぱりパリは良い、ってうなづくのかしら。


モンマルトルの丘を降りて、反対側の駅に向かう。
途中で息子がベビーカーでお休みになり、
あわあわとこのフリータイムを楽しむための場所を探す。


川沿いにベンチを見つけたのでそこに座ることにして、
自販機で缶コーヒーを買う。まだHOTが置いていて良かった。
冷たい缶コーヒーなんて、いけてない。
ベンチに座ると、思いの外眺めがいまいちなことを内心発見する。
アコムとココスと新築マンションの看板広告。
幹線道路側からこのベンチを眺めたときは
緑に囲まれてていいなと思ったんだけど。
座ってこちらからそっちを見るとあんまり素晴らしい景色じゃなかったわ。ふむ。


この辺り一帯が作られるときに、
ちゃんと考えられてたことは多分、企業がものを売りこむ方法。
マーケティングの論理。どういう風に道行く消費者に商品を伝えるか。
道路沿いにある店にどう気付いてもらうか。
数キロ先にある店をどう知ってもらうか。入ってもらえるようどうアトラクトするか。
幹線道路沿いの看板、バスのラッピング広告。
クルマで走る消費者の目に付きやすい大きく分かりやすくコントラストの効いた看板。


考え忘れてたことは多分、
そういう広告をしつくしたあとの街がどういう見え方になるかの視点。
川沿いのベンチに座ったときに見えるはずだった、
緑の溢れる抑制のきいた街並みの代わりには、アコムとココスの看板。


考え忘れてたのは、そっちからの見え方じゃなくて、こっちからの見え方。